静かな絶叫
塔野夏子

螺旋階段の多重羽化を司る夏の淡蒼球が瞬いている
けれど詩は半透明の憂愁で虚ろに化粧して
液状の街へ出かけたまま戻らない
きっと機械仕掛けの虹のダンスに見とれているのだ
だから私は見あきた窓を裏返す
途端にゼリー製の花たちがいっせいに崩れてしまう
プラチナの帽子が月に化けてしまう
それでも螺鈿色の感傷のフラクタル構造は見極めきれず
いつかすれ違ったかもしれない少年の静かな絶叫が
耳の奥にきららかに谺するばかりである






自由詩 静かな絶叫 Copyright 塔野夏子 2012-08-17 21:15:22
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