ブロック塀
灰泥軽茶

となりのまちから
ひとえき切符を買うより
ぶらぶら歩いて行こうと思ったのが
何かの間違い

閑静な住宅街を歩いていると
だんだん道が狭くなってゆき
家も密集してくる

もとの道を戻ろうとすると
ぐるぐる同じような道を歩き
ところどころ
新しくコンクリートで
つるつるの壁ができてしまっている

仕方なくすすんでいくと
道はもうなくなり
家と家のすきまを
体を横にしないと通るしかない

どこの家も同じような作りをしているが
それぞれ朽ちかたが違い
生活感がにじみ出ているのだが
人の気配がちっともしない

とうとう体がつっかえ
じっとしていると
灰色のもやがかかり
ぬうぅっとこんにゃくのように
体と意識が柔らかくなり
だんだん塊になっていき
コンクリートの壁となり始めていたが
ふと上を見上げると屋根が見え屋根は続き

小さな頃よくブロック塀やひさしを歩き
ひとんちをぴょんぴょん飛び回っていたなぁと思い出し
ぐいっと窓につけられた格子を引き寄せ
足を壁にこすってこすって登り
屋根に登り屋根から屋根へ
たたたたっと
夢中で走って逃げて
大きな河の土手に転げ落ちた








自由詩 ブロック塀 Copyright 灰泥軽茶 2012-08-14 00:30:47
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