(批評祭参加作品)詩人のスタイル —せまいみち、よりそうあわゆき—
いとう



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なみさんは同じ傾向の詩をよく書く。
空気が似ているので、
見慣れない人はみんな同じように見えるかもしれない。

なみさんの詩のスタイルを形作っているものを分析してみると、
広い空行や、たどたどしい改行や、平仮名の多用や、
そういうのもあるけど、それを排除していった先に、
言葉の置き方に対するオリジナリティがあるように思っている。
この詩で言えば、最も光っている部分は、

> しんぞうが
> あったのですね

ここに尽きるだろう。
この部分は、単連での独立した表現の中で光っているのではなく、
その前の連の土台があってこその輝きで、
「言葉の置き方」とは、そういうことだ。
つまり、なみさんの詩は、
独立した固有の表現の鋭さ(言葉の選び方)で詩を作るのではなく、
全体の流れの強弱で詩の空気を際立たせるタイプであり、
その強弱の作り方に、際立ったセンスを持っている。

彼女の詩はいくつか読んでいて、
前述のとおり、
「なみさんの詩」というサブカテゴリーが作れるほど、
その傾向はとてもよく似ている。
それは一般には、マイナスイメージとして捉えられがちだが、
彼女の場合、その才能の片鱗が、
「似ているが、その底が見えない」点に現れていると考えている。
それは彼女の詩のスタイルが、彼女によって選択されたものではなく、
深い部分からの発露として、作者自身とつながっている証に他ならない。
彼女のスタイルは、おそらく、「詩のスタイル」ではなく、「詩人のスタイル」なのだ。
逆に言えば、
彼女が将来、現在のスタイルを放棄したとしても、
新しいスタイルすら「なみさんの詩」として認識されることに他ならない。
それはとてもうらやましい才能だと思う。
将来が楽しみな詩人の一人だ。




散文(批評随筆小説等) (批評祭参加作品)詩人のスタイル —せまいみち、よりそうあわゆき— Copyright いとう 2004-12-12 09:45:15
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