夏のエフェメラル
塔野夏子

そして私は見つめる
いま目の前にいる君を
すでに失われたものとして

いまこの時の君のあざやかさを
そのままに胸に灼きつけるには
幻とするよりほかないのだから

これ以上
近づいてはいけない
触れてはいけないのだ

――私の眼差しは
  一条の純粋遊離線と化し

見つめるだけ
君のあざやかさが
いまここで壊れんばかりに極まりゆくのを

彼方に失われたものとして




自由詩 夏のエフェメラル Copyright 塔野夏子 2012-08-11 17:51:35
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