盆送り
そらの珊瑚

おばあちゃんが言った
ふりかえっちゃいけないよ

茄子の牛に乗って空へ帰る人たちを
見てはいけないと言った

だってさみしくなるだろう
送る方も
送られる方も、さ

藁を燃やして送り火をたく

子どもだった私は
いいつけを破ってこっそりふりかえる
薄闇に
白い煙がぼんやりと立ち上っているだけで
さみしくなんてならなかった

砂利道に咲いた鶏冠花
家路への目印かのような赤色を灯す
逝く夏を惜しむかのように
ひぐらしがなく

おばあちゃんを見送ってから
もう何十年もたつ
ふりかえってみたくなる
逢えるんじゃないかと思って

ふりかえってみたくなる
さみしくなってもいいから、さ



自由詩 盆送り Copyright そらの珊瑚 2012-08-10 10:59:19
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