ストーリィ
由比良 倖

生きるってめんどうくさいことだらけだし
案外つまらないですね。

スピーカーから。

メイコさんは、カップを、割れた手で。

お母さん、とても若いですね。
信号機は、黄色だと、とてもきれいです。

世界は丸くて、しわくちゃで
虹色で、つぶすとぐちゅぐちゅで

21才。

絵を描きたい。

21才のメイコさん。

理由もなく、トーストを、割れた手で。

僕と、あなたの分を、分けた。

「ある程度は幸せになれるし、
ある程度は不幸になれる」

だから、目をつむって。

僕は衛生医療センターへ行きたい。
そこで腕を切った。
23針縫った。

メイコさんは僕の腕を縫いながら、
私、21才です、始めてなんですよ、縫うの

「もう少し縫っていいかしら?」と言い

そこで僕は

見えない場所を切らせてあげた
見えない場所を縫わせてあげた

移植よりも難渋だった

僕の体はメイコさんの髪の毛だらけになった

   2

桜が見えるんですけど

「こういうのを敗血症というんでしょうか」

信号機がいくつも見えるんですけど

そして僕は落下しているように

街は浮いてるの?「違う」

静止している?

下半身は水のようにびしょびしょでした

「私はどこにいてもあなたに麻酔をかけられる」

「あなたは世界を裏返しちゃったから」

「あなたはあなたを裏返しちゃったから」

内臓を知るように世界を知るだろう

僕は傷付かない

僕は一生眠れない
肉体などはなおもいっそう

   3


そしてここに   
            が誕生した


自由詩 ストーリィ Copyright 由比良 倖 2012-08-10 09:01:10
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