し だけが 逃げない
TAT
ウチのオカンがあのオッサン連れて来た日も
友達がみんな進学したり浪人したり友禅の弟子に入ったりして
最期朝までカラオケして別れて
翌週ファーストキッチンに勤め口を見つけた時も
俺は
しに
とりつかれていた
ヒッチハイクで出た東京のアスファルトの夜に
動物園の横の障害者用トイレに寝そべりながら
小さい手帳とボールペンで
その時のタイトルは確か『ギリジューク』だったから
今はモーサンジューニだから
考えてみたら
俺がしに
すがってる歳月ときたら
十年やそこらじゃない
呆れた話だ
俺はさぁ
多分猫の死骸みたいなもんで
どんだけ酔っ払っても
サラバと告げて
自分の足で帰ってゆきたい
そういう性分やねんな
会社を辞めた三年前の夜も
仕事に行くのを止めて携帯を切って鴨川を眺めていた七年前の夏の朝も
思えば手帳とボールペンが
いつもポケットに入っていた
しのチカラの前では俺は跪くしか無い
それが俺を生かすし
それが俺を殺す
ウロボロスみたいなもんだ要するに
ともあれ今は少しでも眠っとくべきだ
明日に備えて
君は?
何か食ったかね?
俺チキンラーメン食うけど半分食ってくれへん?