批評寺三十六房:百人木人拳(批評祭参加作品)
角田寿星


1.敬称略です。
2.あまり読めてなくても、笑い飛ばして下さい。
3.責任は持ちますが、プライドは持ちません。
4.「どーしてもヤダ」という時は、私信ください。その方の評は人知れず削除します。
5.12/1午前0時投稿分より、順次行っています。質より量がモットーです。


『転覆』兎の毒
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24904&from=menu_d.php?start=150
前半と後半とで鏡像になってるのかな。自動記述っぽいセンテンスで、正直、何を書きたかったのかがさっぱり分らない。乾いた病や死のようなものは感じたけど。無生物であるはずの、尿とドレッシングの描写がやけに生き生きしてて、面白い。

『涙の色』Tシャツ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24905&from=menu_d.php?start=150
作者の考えた理想の涙、だなあ。透明、ゆらゆら。ゆられているのはらくなことではないよ、と金子光晴さんのことばを借りてみる。

『そろもん(世間さまの話)』みつべえ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24906&from=menu_d.php?start=150
連作のひとつとして考えるべきだろな、これは…。でも無理矢理、批評。
世間に「さま」って付けてるから、世間さまは皆の敬愛する、大切な存在。んで、とても繊細。これくらいかな、この詩からイメージするのは。だから正直、戦争になるのは飛躍とも順接ともつかない、中途半端な印象だった。

『クリーン・サラダ』たもつ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24908&from=menu_d.php?start=150
「昨日みた夢の話」を面白く話す人を、ぼくは一人だけ知ってる。逆に言うと、一人しか知らない。この詩はそんなことを思い出すなあ。クリーンとサラダをキーワードにした高度なことば遊びだけど、好き嫌いは分れると思う。

『aqua』浅野多雨
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24909&from=menu_d.php?start=150
3連めが上手いなあ。あと、遠いところまで行った意識が簡易に戻ってくる、最終連もいい。でもぼくは、簡単に「はじまりを越え」るのは、ちょっとズルいと思った。


『始発電車に乗りますか』松本K
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24911&from=menu_d.php?start=150
困ったことに、最後の10行くらいの方が、前半を占める観念よりも面白い。現在のところ、この詩のウェイトは前半に寄りかかってるように思えるので、そこんところどーするか、だねえ。

『れんげ』ピッピ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24913&from=menu_d.php?start=150
困った…。ぼくって猫好きな人だし。詩としては冗長だし、推敲も必要だと思う。ストーリーだって斬新なわけではない。ただ、死んだ猫のスキマを埋めてくれるのは猫しかいないんだよなあ…。というわけで、1エリオット謹呈。

『ガム味のスピカ』夜月チョーク
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24916&from=menu_d.php?start=150
1連めが、ほんとに美しいぞ。ふっきれてて、虚脱感いっぱいで、しかもイッちゃってる。難クセをつけるなら、スピカがガムの味する理由って、蛇足じゃないのかなあ…。1ペルセウス謹呈。ぷらぷらさん、今、助けに行くぜ。

『鉄砲玉爺さん』Uta
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24917&from=menu_d.php?start=150
爺さんについては興味があります。それだけに、人物像をもっと掘り下げてもらいたかった。今のところだと、ほんの小話的なエピソード、って感じ。

「ラヴリー!ハッピー!チャーミー!」沼谷香澄
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24918&from=menu_d.php?start=150
短歌の批評も初めてだなあ…。「めっさきらきら」がお気に入り。「はむはむぱらだいちゅ」までくると、こっちとしては恥ずかしさのあまり、卍固めの一つもかけてやりたくなります。遊び倒してるね。短歌って、ことばの自由度が高いんだな…。

『時間を支配できたらいい』ベンジャミン
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24919&from=menu_d.php?start=210
うーん、詩らしくしようとしたせいなのかなあ、どこにでもある表現やことばが続いてて、その結果どこにでもある詩のような印象が強いんだよなあ。もっと壊したっていいと思いました。

『コンドームの唄』YASU
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24920&from=menu_d.php?start=210
リアルな面白さがある。たださ、そういう頭で読み進めると、1連めが見事に観念的で浮いてるんだよな…。セックスそのものをことばで表現したのは分るけど、この詩の面白さは別のところにあると思う。1ハメハメハ謹呈です。

『影待ち』ユーリ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24924&from=menu_d.php?start=210
この詩を解説すると、物凄くツマラなくなるような気がするな…。一言でいうなら、魅力的な箱庭。時代も立場も超越して、箱庭の神さまになって遊ぶ。隣にいるこいびとさえも蜃気楼のように遠い、よね。誤読してたらゴメン。

『人生の酒 』不老パトラ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24925&from=menu_d.php?start=210
2連めの親父がいい味だしてるなあ…。「人生の純米吟醸を…」って、何かスゴく間違ってるような気がするのに、訂正することばが見つからないなあ。

『こうしているうちに』練
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24926&from=menu_d.php?start=210
3連めが今イチよく掴めなかったな。なんかディスコミュニケーションを表現したのかなあ。それで一見関係なさそうな、「遠くへ…」が出てくるのかな。いさぎよい感じの詩です。

『娘よ』月山一天
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24927&from=menu_d.php?start=210
親が死ぬのもツラいけど、子供が死ぬのはもっとツラいよな…。うん、かけることばが見つからない。ご愁傷さまです。でもさ、同じ父親として言わしてもらうと、君はそーとーなロクデナシだと思うよ…。

『言葉たち(お勤め)』おこめ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24929&from=menu_d.php?start=210
働く動物たちの印象が薄いなあ。素材をボンボンと置いていっただけで、単なることば遊びの印象が強い。でも黒いマネキンはなぜか光ってるんだよな。どーしてだろ。強い色と淡い色との関係、だろね。

『血のない痛み』びわ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24930&from=menu_d.php?start=210
松とかクレーンとかの舞台配置が、なかなか絶妙なんです。でも、後半になると、有刺鉄線や松並木のメタファーが、あまりピンとこなくなっちゃうんです。針の痛みだけでなく、そこからの発展形があってもよかったのに。

『フラワーフェスタ』マスイジュウ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24932&from=menu_d.php?start=210
酷評で申し訳ないんだけど、乱暴にことば遊びしてるという印象、だなあ。言いたいことって結局4連めだけだよね。3連めまでも微かな文明批判の匂いはするんだけど、残念ながら届かない感じ。しかしながら、いさぎよさや決意を感じる詩、です。

『倒れるもの』木立 悟
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24933&from=menu_d.php?start=210
眼前にあるものが丸ごと倒れて、ふわっと体の中に入ってくる感覚が面白いよね。それが生きていくこと、なのかな、作者にとっては。視覚に頼ったことばや表現を多用してるわりには、はっきりとした像がほとんど結べない。

『遥かなり神々の座*』天野茂典
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24934&from=menu_d.php?start=210
ほとばしる感情から溢れでた余滴、だねえ。静かなコマ送りの描写がゆっくりと色づいていくさまは、いい。奥行きはなくて、平面的な1シーン、といったところでしょうか。

『ほんの一歩の発見』春日野佐秀
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24938&from=menu_d.php?start=330
チャレンジしようよ、っていう詩だけど、これはある限定された状況で通用するものだよね。世の中では微笑んでる間に喰われちまうことは、しばしばだから。すべてを覆うものでないからこそ、強引にガンガンいってほしいな。

『嫌いじゃないよ、と笑ってやりたい』リヅ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24941&from=menu_d.php?start=330
うーん、若い。そして、イタい。言ってることも支離滅裂なんだけど、まあこれは作者の心のままを誠実に書いた結果なんだろう。狭い世界での単なる独白だと思うんだけど、この調子でやってみ。いつかスゴいのが書けるかもしれん。

『懇願』菅井亮('A`)
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24942&from=menu_d.php?start=330
タイトルと本文のギャップがなんとも…。意見は分れるだろうな。うん、短詩として完成されている。軽いユーモア。ただぼくには、「ニーッ」「おれ」「もっとやって」のことばのアンバランスが気になった。

『22センチ』つばき
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24947&from=menu_d.php?start=330
最後の1行がいいなあ。ぱっ、と世界を広げている。逆に言うと、それまでの描写が最終行の説明にさえなってないんだよなあ。

『ファインレイン』かるや
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24949&from=menu_d.php?start=330
ぼくは今、探しています。どこに雨が降っているのかを。ファインレインとは「泣き笑い」のことなのかなあ。やわらかなことばが、すきまというすきまに満ちて、うっすらしたかなしみを作りだしています。

『器の底は刳り抜いたまま、』アルビノ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24952&from=menu_d.php?start=330
絵や映像で思い描くと、エッシャーのだまし絵のように混乱してしまう作品。過去には戻れないんで、赤い鏡に映して過去を覗く構図なんだけど、鏡の置き場所に凄く苦労しています。それはきっと鏡が何を意味するのか、分りにくいからかも。

『盲目』ジンライム
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24955&from=menu_d.php?start=420
短歌は連作というイメージがあった。一つ一つの歌は独立していて、それぞれが緩やかなつながりを持つ、という。これはも少しつながりが強くて、いわば続作、とでもいうのかな。雑踏での揺らぎをもっと感じたかったな。そしたら最後のバイブレーションが効いてくる。

『夜の鳥の追走曲 1.痕』佐々宝砂
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24958&from=menu_d.php?start=420
ひょっとすると冒頭に「眠っている間に」が隠されているのかなあ。自分に還った後に残された、抽象画のような汚れ、だよね。暗い色彩で描かれたシュルリアリズムの画を思い出した。3連めはやや弱いと思うけど、4連めの転換がそれを補ってるね。

『Blue Sky』Hayuki
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24962&from=menu_d.php?start=420
かなり大きなテーマを扱いました。わりと遠い未来の、滅びの予感、かなあ。大道具をガツン、ガツンと置いて、その対極に人間を配置したのですが、その配置が無造作な印象で、その結果、実感にやや乏しかったかな。

『正座する涙に』草野大悟
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24963&from=menu_d.php?start=510
かなしみとやさしさのエナジー、それが華やかな冬を演出する、ってヤツで、面白い視点だと思います。晩秋てのは、どうしても淋しいからなあ、確かにそんな涙に出会うとぼろぼろになってしまうよね。

『狂歩1』六崎杏介
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24964&from=menu_d.php?start=510
独特のことば遣いが独自の世界を構築してるよね。文節ごとに少しづつ韻を踏んで変化してゆくことば。ひとつめは座して渋い色合い。ふたつめは残酷な宗教画の印象。ぼくにはこれくらいしか分らないかも。こういうの書けるのは羨ましいなー。

『11月22日、恋人ができました。』雨
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24966&from=menu_d.php?start=510
タイトル読んだだけで「おめでとー!」と書きそうになった自分の無神経さに、思わずデコピンくらわしたよ。片思いだよね?(とダメ押しする無神経)。メモ的な日記風、とでもいえばいいのかな、独特の味わいがあって、単なる恋の詩に終わってないところが、いい。

『_』あざれあ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24969&from=menu_d.php?start=510
かわいらしいなー。消火器があるから、夜のオフィスかなあ。夜食食べて、コーヒー沸かして、タバコぽわんとふかして、深夜のエアポケット、ちんまりとした虚無。

『たましい』玉兎
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24970&from=menu_d.php?start=510
ことばのやわらかさが心地いい。連ごとの三段論法として考えると、ズッこけるほどに整合性がなくて、思わず笑っちまった。ただ確かに詩全体を眺めるとそんな違和感は消えて、この詩は分析するより感じるのが正解なんだろうね。

『さら さら さら』砂木
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24974&from=menu_d.php?start=510
うーむ…こりゃ唸ったよ。確かにカフェで人を待ってる風景だ。これだけの材料で描写できるのは、スゴいね。野暮かもしれないけど、「いったいどういうポーズさ?」てツッコミはさせてほしい。ことばの響きに惑わされて読者として置いていかれた、寂しさを感じる。

『そら』こむ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24978&from=menu_d.php?start=510
なつかしい童謡を聴くような味があります。「ねむれ ねむれ そら」も美しいなあ。「あのこ」を絡めた隠しテーマがありそうです。仄かな死の匂いを感じはしましたが、隠しテーマのままで終わっちゃったかな、という印象。

『夜』多々田 駄陀
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24979&from=menu_d.php?start=510
夜そのもの、というより、夜と向き合って、思うままを書いた、という感じかな。前半で朧げながら視えてきた世界が、後半の暴走ともいえる筆致により瓦解してしまったかもしれない。独特の緊張感があります。

『月夜の手旗信号』ちづさ守り
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24980&from=menu_d.php?start=660
うおう。幻想的ではあるが、その世界を縦横に手旗が切り裂いてる。ぼくはその切り口を視ているんで、詩が多面的になっているんだね。読み切れてないためかもだけど、手旗信号のことばは、ちとピンとこなかったのもあった。1シグナル謹呈。

『syenrgy vol.7への献辞』soulflower
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24984&from=menu_d.php?start=660
短いことばの中に、思いがたくさん詰まってるね。ただ、短い詩はことばの遣い方にも注意が必要で、「踏み続ける」は持続力は感じるが、ことばの疾走をコロしてしまったかもしれない。冒頭の1行「スネア、…」がカッコいいよなあ。

『i will be…』HEDWIG
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24988&from=menu_d.php?start=660
軽い工夫があって、なかなか楽しませてくれます。ふたつのスピーカーが向き合って、愛のことばを囁きあってる情景を思い描いてしまった(笑)。色つきの音声と、その「白」ってのも、いい着眼点だと思います。

『生き方』最果タヒ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24989&from=menu_d.php?start=660
最終の2連が、スゴく美しいなあ。大切な記憶と、それを失う落胆を、余すところなく表現していると思う。前半部分は、正直ちょっと入っていきづらかった。頻出する「あしさき」があまり雄弁でないためかなあ。

『ジオラマ』霜天
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24993&from=menu_d.php?start=660
うーむ、なるほど。ミニチュアの街ではなく、街をミニチュアにしたんだね。そうした視点で視えてくる、視えないネットワーク(何書いてんだ、おれ)。繋がるという事実より、繋がりたいという願望によって、より味わいが深くなるね、上手いね。1ストリング謹呈。

『銀杏』蒼木りん
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24994&from=menu_d.php?start=660
1連めが好き。絶唱ではあるんだけど、大上段に構えたことばが多いんで、読後には作者の感傷だけが残っています。

『火花』稲村つぐ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24995&from=menu_d.php?start=660
高度な比喩だとは思う。なぞなぞみたいで楽しく読めました。詩の印象としては、「ミニマム」の一言、かなあ。

『ZOMBIE#7』構造
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25003&from=menu_d.php?start=690
ゾンビの出所ってアフリカだっけ。ぼくはカリブだと思ってたけど…。まあ、生きながら死んでるような現代の生活、ということで理解。音楽のビートを基調としたことば運びですが、その運びは完璧ではない。それは完璧ではない人物像とリンクさせようとしたのかな。

『冥王星を飛び越して』umineko
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25008&from=menu_d.php?start=690
他愛ない「好き」の詩だね、けして否定的な意味合いで言ってるわけじゃないので念のため。エウロパが上手かった。

『石生み』日出野テルミ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25014&from=menu_d.php?start=690
わりとよくあるテーマだと思うけど、上手いことば運びで過不足なく描写できてる。タイトルもいい。最後の「味噌蔵」は自嘲的なニュアンスだと思うけど、ユーモラスなことばなんで、全体の色調も、それに近い感じでまとめてもよかったかも。1ストーン謹呈。

『12月の晴れた空の下で』ヤマト
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25016&from=menu_d.php?start=690
花を捨てる時って、確かに言い訳が必要で、ドキッとさせられました。ストレートで好感の持てる詩だけど、も少しことばは刈り込めるかもしれない。

『地下鉄の花占い』A道化
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25018&from=menu_d.php?start=690
独特のワールド。流れるような筆致が魅力的です。擬古調のにおいがプンプンするけど、ことば自体は「仄青い」以外はそうでもないんだよね。きっと、リフレインの多用や、最後の「ああ…」に始まる落としどころなどが、そう思わせるんだろう。

『無垢な牙』望月勇魚
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25021&from=menu_d.php?start=690
つらつらと考えてることをまとめて…いないよな。基本的には、単語や短いセンテンスの集合体。まだ誰にも向かうことのない牙をじっくりと磨いている感じで、雰囲気はいいよね。

『詩と詩人について(1)』中田満帆
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25024&from=menu_d.php?start=690
ああ、冒頭の2行がいい。詩人に関する思想は、軽みの方向に持っていこうとしてるね。最終連は、そうした軽みにふさわしいと思うけど、もっと突きつめてほしかったかな。

『愛しすぎて』紫音
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25025&from=menu_d.php?start=690
愛しさあまってなんとやら、てヤツですね。こういうスタンダードな感情は、スタンダードなことばを遣うのではなく、実体験に基づく生々しさがあったほうが、インパクトがあるように思えるね。

『まどろみのpassenger』加藤向晩
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25031&from=menu_d.php?start=690
確かに田舎の路線バスつーのは、降りてみると、錆びかかったバス停に2、3個の到着時間が書かれているだけで、片道だけかも、という不安な気分になります。物凄い山奥にバス停があることもあるし。でも、死までは飛躍しすぎの感があるね。

『ソラ』長月 猫
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25032&from=menu_d.php?start=690
空だけをとことん書こうとする気概は買います。青い空は地球の大気のせいなので、地球が滅んでも青い空が存在するのは、現在のままでは説得力ありません。創世記から未来までの、空の歴史に思いを馳せるのもよいかも。

『思い出にしないで』kuku
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25033&from=menu_d.php?start=750
「運命の星」つーのは、時間やら記憶やらのメタファーなんでしょうな、きっと。よくも悪くも若さを感じる詩。

『シング・ウィズ・ウルブス』かの寿星
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25034&from=menu_d.php?start=750
こっそり宣伝。読んでくだされ。

『ホワイトノイズ/ピンクノイズ』夏野雨
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25036&from=menu_d.php?start=750
この「視えざる、聴けざる、言えざる」状態の感覚の揺らぎは、たくさんのものを視よう、聴こう、話そうとして生じたもので、たくさんの感覚が体内に入って爆発しそうなのに、どこか柔らかい。いい詩だね。1カラー謹呈。

『くだもの』清野無果
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25040&from=menu_d.php?start=750
しゃべってるのに腹がふくれるのは吉田兼好の逆だけど、「きいてもらえない」不満が肥満に繋がってるんでしょうなあ。寓話的であるのに、どこかリアルです。特に3連めのことば運びは淀みなく、上手い。

『自転車』路傍の石
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25042&from=menu_d.php?start=750
語彙の少なさイコール世界の狭さ、ってわけじゃないけど、似たようなことばの繰り返しはやはり気になるところ。いっぷう変った焦燥感が感じられて、いいんだけどね。

『赤に失敗、赤に感謝。』LEO
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25044&from=menu_d.php?start=750
赤に感情が動く、それについての理由はいらない(ルイス・キャロルも言ってるしね)。ただ、赤である必然性は必要だと思う。その必然性を無理矢理つくり出す、そんな工夫はほしかったところです。

『あおいりんごをかじるよ』himaraya
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25046&from=menu_d.php?start=750
不思議な味があるなあ…。うがった見方かもしれないけど、つまみ食いの浮気なのかな、これは?青空の本命が隠れてるスキに、抜け道とおって青い林檎をつまみ食い。曲解かな…。

『いつまでも純粋に君を愛する方法』天使
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25047&from=menu_d.php?start=750
これは「君を愛する」詩じゃないんだね…。「僕の世界の中で考えた理想の君を愛する」詩なんだね。つまり、現実の君を愛さないこと、それが純粋に君を愛する方法、というわけか…。なるほど、納得。

『再生』大西 チハル
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25057&from=menu_d.php?start=750
古くなった本がリサイクルされるような、そういう意味での再生なんだろうね。イメージ的には人形にも思えるけど。中央部のパート、記憶の断章の部分が美しく、断然光ってます。1メルト謹呈です。

『ねむり姫』船乗り
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25058&from=menu_d.php?start=750
うん。華やかで、無邪気で、優しくて、何も言ってない美しさがあるね、この詩には。姫さまを守るのでなく、現実世界に解き放つ、そんなとこがいいんだよね。1モーニン謹呈。

『沈む花』105
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25061&from=menu_d.php?start=750
ことばに緊張感があって、それぞれが大きな花弁になってるよ、いいぞ。花ごと壊しちゃいたい気分が伝わってきます。1連めはちょっと入りづらい印象。

『サンドウィッチ』一日ミチル
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25062&from=menu_d.php?start=750
途中からどんどん面白くなってくるな。ぼくは「トマト」の章が好き。こうした偶然によって作られたサンドウィッチは、望まれずして生れてきた子供みたいな哀愁を感じたんだけど、どうでしょうか。

『庭を花で埋め尽くすことについて』いわし
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25063&from=menu_d.php?start=750
タイトルがすてきだなあ。丁寧な書き込みは、作者の真面目な論考が伺えて、好感を持ちます。一方では、説明的なことばや展開が多いのが難点かなあ。

『もしも』タウン・ケロ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=25069&from=menu_d.php?start=750
「だロー」ってのが、作者のはにかみを感じて、思わずニンマリするよね。うん、意外とキザなこと言ってるから、この詩は。

以上、12/1から12/2に投稿された81人、81作品。
あとは「おすすめ」からいくつか。

『主要海洋』早坂 恒(たみ)
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=22673&from=menu_d.php?start=2760
なんつーのかな。主要海洋は眼前にあって、過去にも現在にも未来にもあって、同時に何処にもない。んで、多方面からさまざまなものが一緒くたに流れ込んでくるんだ。男たちの野太い歌もあって、トマス・ピンチョンの小説を思い出す。ユーモラスな旅情が心地よい。空間の旅ではなく、時間の、頭脳の旅。

『楽園ツアーへようこそ』シャッターコーン
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=19371&from=menu_d.php?start=5310
この詩が1ポイントだけ、つーのは、納得いかないなあ…。人類は楽園の住人たりえず、単なるツアー客として訪れる、という図式をぼくは見たんだけど、落ち着いた語り口が気に入ったんだよね。穏やかな憧れの楽園が、パッと広がって。

『ミドリンガル』鈴川夕伽莉
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=14953&from=menu_d.php?start=8730
たんたんとしてるからこそ、物憂い水の底のような日常が見えてくる。みんな水面に顔を出そうとして、パクパクさせている。身近な材料でこれだけのポリフォニックな情景を導き出せる力量には脱帽です。(四)の「薄っぺらい」は、ら抜き言葉より違和感あるな、やっぱり。

『ニュー/ヒア』nm6
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=10638&from=menu_d.php?start=11700
これは素直に凄いと思ったな。やわらかく新しい世界、硬質でゴキゲンな考察、そのいずれもが浮遊していて、広大なアトモスフェアを生成しているよ。


『夜警』ダーザイン
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=10014&from=menu_d.php?start=12120
詩の大部分が情景描写。んでこれが、これでもか、つーくらいに丹念なのね。少しセンチメンタルな箇所もあるけど、夜のチカチカは充分伝わって、最終3連の「あなたは…」以降に、すっと入っていけるんだよね。

『透明なお皿』チアーヌ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=9715&from=menu_d.php?start=12330
透明な皿が、いろいろと何か暗示していそうな、そうでないような、微妙な印象だね。無邪気でわがままな食欲が、「とりゃあ」って壁に皿をぶつけて割る感じで、あっけらかんとしたユーモアを感じました。

『朝の食卓』青色銀河団
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=9493&from=menu_d.php?start=12480
「未詩」なんだけど、ゴメン。これは多分、和風の朝食だと思うんだけど、キラキラ輝いてるバタくささとのギャップが、新しい感慨を想起させるんだよね。壊れそうな繊細な、ご飯と味噌汁と漬物と焼き魚の切身。

以上、100人にはちと足りませんでした(残念)。
気紛れで追加いたしますので、批評のリクエストは引き続き行いますです。


散文(批評随筆小説等) 批評寺三十六房:百人木人拳(批評祭参加作品) Copyright 角田寿星 2004-12-12 02:02:21
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