夏休み
……とある蛙

また、夏が
また、あの光景が見えて来る
田圃の畦道を
母と一緒に歩いている
手を繋いで歩いていく

畦道の陽射しは強く
麦わら帽子の隙間から
頭髪の汗をさす
揺らめく道端
青い稲

また、夏が
また、あの光景が見えて来る
緑の木々に囲まれた小径
葉の隙間から、夏の眩しい太陽
小径を抜けた先に広がる青い空

黒くなった両腕の
突き上げた先にある
夏の太陽
自分の未来と今の活発な幸せを
まぶしく照りつける

また、夏が
また、あの光景が見えて来る
プールではしゃぐ子供たち
撥ねた水がキラキラ輝く
体につく水滴の優しさ

シャワーの手前の
小さなにじに
キャーキャーキャーキャー
騒いでいた夏のプール
子供が 皆 真っ黒けで
坊主頭だった頃

また、夏が
また、あの光景が見えて来る
気の早い蜩(ひぐらし)の声
河原の大きな石の上から
魚釣りしようと
一気に駆け降りる谷川への道

大きな岩の上に乗り
タケの釣り竿の
餌はザザ虫
岩の隙間のポイントめがけ
投げ入れたつもりがあらぬ処
それでも懸命に釣り針を投げ込む

また、夏が
また、あの光景が見えて来る
田圃から聞こえる
あの蛙達の鳴声
悲しくはないが
懐かしく滑稽なあの鳴声

また、夏が
母の実家でのあの夏の日が
陽射しと共に蘇る




自由詩 夏休み Copyright ……とある蛙 2012-08-01 13:13:31
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