海の家
peau


a,

波打ち際にしゃがみこんで
砂浜にいくつも円を描く
白いスカートの裾は
潮にひたひた濡れて揺れて
手の甲に透けた
青い筋がきゅっと強張る
最初の晩から此処へ来て
明日には帰る
きっと帰れる
あと少し
生まれない家族を洗い流したら
愛を知らない少女に戻っておやすみ

b,

繋いだ手を放して駆けてゆく
砂浜の先の緩やかな丘まで
何にも縛られない無邪気さは
すべての価値を無まで戻して
それから静かに紡いでゆく
丘の上のわずかな野ばらを
手折り集めて

c,

沈む太陽に焦がれて
赤く染まった爪先を
心臓といっしょに投げ入れる
暖炉に蒔をくべるように
深い波間の
暗い夕暮れ
眼を閉じるよりもっと










自由詩 海の家 Copyright peau 2012-07-24 03:25:52
notebook Home 戻る