ノート(ひとりの子)
木立 悟






雨を押すと出る
水彩の
青空


夕方の
爬虫類の



波に奪られた
光に奪られた
警告


白墨
白の絵の具
何も描けずに打ち寄せる


蒼から時間を抜き取って
たくさんの大きな瞳を見つめる
陰や 川や 狼煙の子


ふかみどりの筒に上下する
誰にも知られず 赦されぬ滅び
けして誰にも触れることなく


夕陽の終わり 川の終わり
行方はつづく
いつもの径を通らぬ子


羽の切れ端をつなぎあわせて
草でもあり炎でもある舟を作った
誰も 乗るものはなかった


鈴の腹を 砂につけて反りかえり
溺れる心を空に突き刺す
したたりが出会う子 やさしい子


椿のにおいの荒縄に
紙の鳥を流しては
夜の傾きを見つめている


花の鏡に映る花
残るもの残らぬもののはざまから
真昼はますます白く遠去かる




























自由詩 ノート(ひとりの子) Copyright 木立 悟 2012-07-24 00:38:25
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