語り部は謳う
永乃ゆち


そうして語り部は謳う


燕に託した幸福の王子

お菓子の家の魔女の事

舞踏会に行く灰かぶり


夜毎夜毎に語り部は謳う


もしいつかこのわたしが

語り部になれるとしたら

貴方を想い謳うでしょう


言い出せない募る思いと

聞き出せない本当の心と

責められない優しい嘘を


夜毎夜毎に泣き崩れては

貴方を想い謳うでしょう


けれど必ずしもそれらは

ハッピーエンドにならず

灰かぶりは結局灰かぶり

シンデレラにはなれない

私は結局私のままでしか

貴方を愛せないのだから

私のゆく道をひたすらに

進むしかないのでしょう



そうして語り部は謳う


片恋に揺れる娘の息と

泣けずにいる雨の夜と

いつか来る晴れの日を


いつか来る晴れの日を



貴方のことを瞼の裏に

優しく焼き付けながら





自由詩 語り部は謳う Copyright 永乃ゆち 2012-07-21 04:59:51
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