鈍痛の南側の季節
nonya


西瓜の皮の饐えた
匂い

溶けかけたアスファルトの
執着

潮の香りで擦り剥けた
夜明け

逆光の中で振り返った
誰か

何処から剥がれ落ちたのか
皆目見当がつかない
ことにしている
記憶の切れっ端

生温いファンタの
水溜り

うなだれた向日葵の


目尻から滴り落ちた
傲慢

二度と帰らなかった
あるいは帰って欲しくなかった
誰か

我慢できる虫歯の痛みと
とてもよく似た季節の
ねばった舌先が

今年も僕の
南側を舐め回す




自由詩 鈍痛の南側の季節 Copyright nonya 2012-07-18 23:00:33
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