with or without you -Kurt Cobainへの哀悼-
関口 ベティ
天使だった
いつも泣いていた
小さな私たちの かみさまであって
神では なかった
94年 私はたったの9歳だったけれど
Kurtの死が私の死だと
その日 知った
犯されて痣になった内股の痛みが
引き金を引く彼のつま先の熱さだと
錯覚した
運ばれてゆく運搬車の黒いビニールは
夜空のエナメル色に
光っていて
そこに誰も入っていないことを
みんなが知っていた
その瞳
こんなにきれいな宝石を
誰も みたことはないだろう
青く輝く 命の色だ
私の部屋と同じ ここにはいないものの青だ
海より深い
初めから許された
星硝子
私が持っている透明な猟銃が
つまらない人を無差別に撃ち抜いて
もっとも退屈な地面へ
押し倒してゆく
君がいた日もいない日も
金融街に降る季節外れのぼた雪
こんなものは要らないと言っているのに
無用なゴミばかりが
私たちを 汚してゆく
硝子の動物園は
また大人という誰かに
薙ぎ払われてしまうのだろう
[am4;05]
引きずったジーンズが
深夜のアスファルトに摺れて
ひひ、と
小さく肩を揺らす彼の含笑いと
重なった
私は今日
君と同じ年に 辿り着いた