きれいなお城
はるな
きれいにつみかさねた夜でできたお城
ぴかぴかに磨かれた言葉たち
いい匂いのする分厚いカーテンをくぐって
しらじらしい朝をくぐって
いくつものいくつもの
いくつもの肌をふみにじって
あらゆるやさしさを足げにして
愛している人の頬を張りたおして
愛してもいない人の肩に抱きとめられ
愛してくれる人の臓腑を食いちぎり
もうこれ以上一ミリメートルも泳げない
そう思ってからまた腕も脚もばらばらになるまで泳いで
泳いで泳いで
眼も髪も肌もからからになるまで泳いで
そうしてやっとたどり着いたわたしにわたしが言う
つぎはこの皮膚をこえて
そしてたどり着いてちょうだい
はやくわたしにたどりついてちょうだい
まだかたいお城のなかで
待っているからたどりついて