夏はじまる
もっぷ

七夕は梅雨空に終わり
宙で二人が会えたのかどうか
そんな話題は太古のものとなり
地上ではいよいよの夏の盛りとなった

皆が思い出作りのパズルに取り組み始め
わが子のためにと口実をつけ
案外背伸びの過ごし方を選んだり
あちらでは初心な恋人たちがはじめての二人の夏休暇を

慎ましい心持ちで待っている
地上のいのちのヒト以外にたずねてみれば
風を頼みにしていますと

やっとの息を継ぎながらの
野の花の憂い
常緑樹がそれを発見して
私の緑陰で幸を受けよ、と請け負ってやまない

彼は幹の節節の負傷を気にしながらも夢想を続ける
たとえば冬になったなら自分は
陽の慈しみを地上に伝える落葉樹でありたいのだけれど
と遠くを見ている

…思惑が錯綜してますますこの国の寒暖計は
狂いの度を増さんばかり
いっそ沸点を目差して自滅してしまおうか


これら地上での気侭奔放な心模様は空の腰掛に佇んでいる季の神の顔を
曇らす

ああ空が曇ってきた
地上では単なる空模様でしかない季の神の嘆きと言ったら!


自由詩 夏はじまる Copyright もっぷ 2012-07-09 18:00:53
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