古い日誌
peau




指先が追いつかないから
言い訳を放棄した七月
名前には太い訂正線が引かれ
出席番号は削除された
どこからか、逃げて、と言う声がしたけれど
靴箱はすでに包囲されていたから
上履きのまま窓から飛び出して
五階だったの、気が付かなかった

狭い四角の中は
一切れのパイを取り合っている
獣たちの檻みたい
あんなに机からはみ出しちゃいけないと言われたのに
窮屈だったから
たったそれぽっちの理由で

雨上がりの花壇に咲き乱れた
紫陽花の中に横たわる
あれはわたしじゃなかったんだって
霧のように立ち昇る
青い記憶を反転させて







自由詩 古い日誌 Copyright peau 2012-07-07 09:56:17
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