おまもり
peau




出口があまりに白過ぎて
産道の途中で立ちすくむ
心細さに
両手に暗闇をひとつずつ握りしめた
行く宛のないいのちはやがて
小さなひと型になって二本足で歩く
発達した耳に語りかける
眼前に聳える山岳の声が
ほうら、おまえ
その手にあるものひとつも落とさず
私を越えられるかと吠えている
眼前に広がる海原の声が
ほうら、おまえ
その手にあるものひとつも落とさず
私を渡れるかと唸っている
出来ぬなら代わりに
か弱い脚を置いてゆけと嗤っている
ひとつ取られ
ふたつ取られ
やがて山梔子色に夕暮れる荒野を
這いずり回って疲れ果てた頃に
頑なに閉じていた手からこぼれ落ちた
もうすぐあたり一面が
かあさんの懐から持ち出した
御守りで包まれる









自由詩 おまもり Copyright peau 2012-07-07 03:47:52
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