没個性的な幻想たち
青土よし

鋼色の花が咲く
上も下も砂で覆い尽くされ
緑色のうめき声が
下腹部に響き渡る
それはちょうど
ベートーヴェンの第九のメロディと酷似していて
私はその暴力的な歓びに満たされる

右手を失っても
左手を失っても
果たされなかった青春の影が
いつまでも死にかけの少年の夢にもぐりこんで
夜を跡形も無く破壊する
静寂の内に
無音のドリル音
(これが全てを破壊した)

夜明け前の真っ暗闇の中
静かにカーテンを開くといい
白い清潔なパジャマを着た
何百、何千、あるいはもっと多くの少年たちが
次々と窓から飛び降りる姿を
君は目撃するだろう
彼らはみな一様に
その未発達な両手で
耳を塞いでいる
何か途轍も無く途方も無い轟音から
逃れようとしているかの如く


自由詩 没個性的な幻想たち Copyright 青土よし 2012-06-29 23:58:36
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