ドライ
マクベス



夢とも違う妄想とも違う意識下の世界で私はロープを巻き付けたミイラを引きずりながら見渡す限り砂だらけの砂漠を旅していた。太陽の照り付けが砂を焼き、遠くの風が砂丘の隆起を絶えず変えている。

もうずいぶん歩いてきたけどさすがに暑いので便宜上砂漠に現れた自販機から500mlの缶ビールを買う。プルタブを引く。パチン。ペンギンが出てきても不思議じゃないくらいキンキンに冷えた南極スーパードライ。

私はミイラに跨がり仁王立ちになるとカラカラに大きく開いた口に勢い良くビールを流し込みその苦悶の表情を楽しんでいる。
ミイラに腰掛け一息。
ジョッキに注げないしバジルソーセージも無いのが残念だけど砂漠の真ん中では仕方ない。旅とはいつも少しずつ不自由なものだ。

さあ行こう!
パン!と膝を叩くと油断していたペンギンが飛び上がって敬礼した。
「若造、返事の前と後ろにサーを付けろ、ヒックッ」ミイラは少し酔っている。
私とミイラとペンギンの旅はまだ始まったばかりである。



自由詩 ドライ Copyright マクベス 2012-06-28 22:24:28
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