PIANOMAN
……とある蛙

もの悲しい口笛のイントロ
ブレイクのアルトサックス
異邦人の生まれ故郷のニューヨーク
そこから彼の歌が始まる

彼の歌は哀しい
生まれ故郷の大都会で
鳴かず飛ばず
鬱病になって病院へ
そのまま挫折して
名前を変え 西部まで逃げ込んだ

「なぁ ビル」

安酒場のピアノ弾きで
明日をも知れぬ、その日暮らし

ジントニックの息の親父が
ピアノの傍らで呟く

「あの時の歌を演ってくれ、
あの哀しくて美しい歌を」

仕事帰りの一杯で
そのままねぐらに潜り込む

彼はそれでも愛されて
哀しい歌を歌い続けた。

彼の歌は美しい
人とのつながりを大事にして
生まれ故郷に帰ったときには
幼なじみとまたバンドを組んだ
誠実さと素直さ
類まれなソングライティングの才能
生み出された歌は哀しく美しい

ジョージは用無しでラリーの元へ
電子楽器のエフェクトに
奥行きを与えられたメロディーに
ニューヨークの路地裏の
ボーっと浮き上がる街灯が見える
ラリーは彼を信用し
彼はラリーを尊敬した

彼の歌は楽しい
子供の頃聴いたドゥーワップ
大都会の路地裏の遊び
みんな背伸びのドゥーワップ
フォーシーズンズへのオマージュ
JUst the Way you are.

切ないメロディーの奥に
息づくドゥーワップ
全部丸ごと
本当に愛していたのは
彼だった。
そのままのラブストーリー
そのままの想い出




自由詩 PIANOMAN Copyright ……とある蛙 2012-06-25 14:45:31
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