台風のあとで
そらの珊瑚
たいふういっか
が
台風一家だと
思い込んでいた頃
台風が去った朝
通学路には
一家が遊んだあとが
残されていた
なぎ倒された空き地の草
折られた柿の枝
おしゃかになった傘
迷子になった片方だけの長靴
引き裂かれたビニールシート
遊んだあとは
片付けもせず
台風は行ってしまった
一家には
母さんはいないのだろうか
遊んだあとは
片付けなさいと
口うるさく言う母さんが
いないのだろうか
台風一家は
父さんと子ども三人と
じいちゃんと
ばあちゃんと
イキオクレのねえさんなんかが
いるのかもしれないなぁ
やっぱり
母さんがいないって
さみしいものなのだろうか
そんなことを
思いながら
茶色い濁流と化した
川に沿った通学路を
なぜか
しんみりと
歩いた
朝
台風は行ってしまった
お祭りのあとは
キライなんだ
たいふういっかが
台風一過だと知った今でも
台風一家のことを思う
イキオクレのねえさんは
果たして嫁にいったのだろうか