小豆鍋
木屋 亞万

両肩に光るタスキをぶら下げて工事現場を飛び出していけ

おやゆびをついっとつかいサンダルに前をむかせて走りだすきみ

香水の涼しい匂いを嗅ぎながら百貨店のベンチにて待つ

澱みつつ腐りゆくのに眼を染めて休みを過ごす死んだ目をして

俺が見る聴く考えるものだけが世界のすべて刺せよ激しく

紙よりも薄っぺらくてわたくしが吐く言葉なぞ吹けば散らばる

逃げられぬ逃れられぬと身をよじる眠る頭の中に縛られ

冷静が幻想の芽をむしり取る風の強い日何もない空

人間でいることにもう飽きてきた私はいつも私なのです

鳴り止まぬ土下座コールの只中で酒をぶちまけ火を放つのだ

タカタンタカタンタカタンタンタカタタンタカタンッカンタンタンカ #タンカ

上田でも高田でもなく下田でも横田でもなく中田でもない #tanka #tanaka

やぁあーい!おっまえんちぃ!おっばっけやぁあああーしきぃぃいいー! #tanka #kanta

もう空が明るい、朝だ、太陽は最近妙に来るのが早い

運命の人などいない宿命に命運尽きて混迷しきり

男なら誰でも思うことだけどスマートフォンにはくびれが欲しい

休みでもやすまらないよ安らかにやすみたいよね静かに永遠(とわ)に

骨張ったスネからしゅるりと芽がのびて青い若葉の透ける膝下

「どちらかというと死にたい」「やや死にたい」理由を◯の影に葬る

吾の前で恋の話をする者はひよこの死骸を踏むようなもの

ストローで吸うスワローことつばめの巣スローで座ろうスワロフスキー

本ならばとっくに閉じて積んでいる知る価値のない僕の人生

目玉から耳へと風が抜けていく人形は風通しが良いの

あゝ今日も男ばかりがしんでいくネクタイを天に吊るせばまさに

寝室のまくらとふとんは横たわる僕のおかげで真実になる

もう起きることにも飽きて寝るだけの寝子になりたい死なぬ程度に

抱擁を渇望しつつ矛盾する触られたくない感覚もあり

さびしないアルマイトでもあるまいしアルマーニ着てアルバイトする

くしゃくしゃのアルミホイルが「光沢を取り戻すために溶けたい」と云ふ

アス サクラ チル キノシタデ ハナビラ ヲ カサ デ ウケトメ ナガラ カエレヨ

いかなごのくぎ煮の中の刻まれた山椒出汁に染められている

春なのに晴れているのに荒れている海を見る眼が腫れては霞む

血液を彷徨ふ針だ後悔はいづれおまへを殺めるだらう

無精道と云うものなら戦わずして死ぬことと見つけた、だりぃ

モーテルに泊まれば冴えないオヤジでもモテると聞いてやってきました

一秒が抱きしめられぬ一秒がち秒が秒びょびびび過ぎゆく

君の目の涙を啜る口づけをする今夜は月も瞼をおろす

君がいま流した涙のひとしずくただすみやかに宇宙へ溶ける

デコルテに額をあててぐりぐりと首を振ってるでこが泣いてる

「泣くな」泣く「泣くな」泣かないもう泣かない「泣くな」「泣くな」に呪われている

いたくないよあんしんしていみもこたえもないままなにもかもおわる

嫌だね終わってしまうでも終りの見えないのもまたつらいことだね

花と目を合わさずむしるむしる手の中で崩れて眠れさやかに

だいだいのしずくがとぶぜ舐めたってあまくないのぜぬれたちんぴは 

ふくらんだ蜜柑の皮膚と肉の隙 ただようかつてのみずみずs BUSH!!リ

ぬるぬるとまとわりついた脂身も熱いお茶にはさらさら勝てぬ

ほうじ茶に封じられたし一枚の牛の恨みぞ流れ落ちぬる

黒い布一枚隔ててヘッドフォンにうたう唇と無音の部屋




短歌 小豆鍋 Copyright 木屋 亞万 2012-06-16 18:53:33
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