美しくなされるべき始末
itsuki



かなうなら君にさわりたい
君のまなじりの先に棲み
見とれるほどきれいなその頬を
撫でて

だれよりも長くて、細い指をもっている
たとえばそれにわたしの肌の輪郭
その境界線と起伏など
のこらず追ってもらうこと
背筋が
張るほど
いとおしい行為だ


交わす恋心はこの部屋でのみ培われ
愛を子どものように育てあげる
薄暗い部屋だ
日差しのない
空気のない
真夜中の水のような感触の

劣等と、はげしい欲求は
ひらいた鍵からすでに放たれている
寝台にねそべって
口の紐をほどいてゆく方が
どれだけこころを満たすかもしっていて
それでも
来る朝が生活に服従させる


かぞえていた
密室
そこで過ぎる一日
戸惑う幼さが
慣れて幾つになっていくかを
毎夜


君に誓うことがある
わたしはおそらく何もかもを持っていて
極上の幸福や
甘やかな暮らし
そうして嘘をつき騙すこと
叱られる多くの出来事、
それらを糧に
すこし泣いたり、眠ったりするわたしたちの
あいすべき生き物を食わして肥らして
何もかもを丸ごと
君にくれてやるということだ


さわる
うつくしい指尖が君のものでよかった
凍えと熱射はすこしだけ
これからには要るのかもしれないが
わたしのかたちは、
君に捧ぐためにこそあったのだと
そうして君の指尖も
やはり同じであるのだと
そう言わせて

部屋を閉じる
鍵の先では
息は決まったやり方で
この内側、
君にさわる、
それ以外のよろこびを
わたしは他にしらないと思うのだ




自由詩 美しくなされるべき始末 Copyright itsuki 2012-06-12 07:27:23
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