転がる石
HAL
ぼくは昔 転がる石だった
ぼくを握った手の熱さを
ぼくを投げたその手の強さも
まだ忘れていない
でもいまのぼくはただの石だ
転がった所にただいるだけの
単なる石になってしまった
もちろんぼくだけじゃない
多くの石はただ道にいるだけ
邪魔だと蹴る奴もいるけれど
昔のぼくはそんな奴に向かって
投げられるための石だった
怖がらせるための石だった
そいつらの顔面を直撃したときは
遁走する背中に向かって飛んでいくのは
命中すればその快感はより強くなったよ
同胞には火炎瓶もいたし
角棒も鉄パイプもいたし
でもどうしてだろう
ぼくは熱い手で握られ
投げられることはなくなった
それが不思議でならない
いまこそがぼくがぼくらが
腐り切ったものに向かって
投げられるべき時じゃないのか
力を込めて的に向かって
投げられる凶器になるのは
顔面を直撃して鼻血をださせるのは
ぼくやぼくらの役目だったはずだ
いまのきみらはどうしたんだ
もう熱い手も持たず
もう強い力も捨てて
その手はただ握手のために
成り下がったのかい
それともぼくやぼくらに
別れの手を振るためかい
そうすることを選択したなら
もうこの国も世界も
未来永劫 変わることはない
昔話と鼻でせせら嗤うかい
でももう熱い手も持たず
もう強い力も捨て去った
その手に一体どんな意味があるんだ
その手に未来を掴む気概はあるのか
転がれないぼくをぼくらを
ただの石っころにしてしまって
この先なんの後悔もせずにすむのかい