水と巡り
木立 悟




花のむこうに
音は横たわる
夜の一室
屋根の下の迷路


鉄の隙間から見える空
夜は枝
別れは多く
慈悲は少なく


時間がまだ
舌の上にあるうちに
きまぐれな穴が
穴のなかに消えないうちに


朝の鋏で
切れぬ輪を切り
人形のように
まわれ右をする


午後は夜は未明は痛み
朝を朝に迎えるあがき
泥に近いくらいまで
金は薄まり 網の目に光る


枯れ枝の影が
三つの入口を隠している
水は影のかたちに流れ
影とともに東へ向かう


中庭と水音
暗くかがやき
壁と窓にはねかえり
土に 流れに降りつもる


多重の目を持つ生きものが
白と黒の日を歩みゆく
遠い花の声 色の声
水平線にまたたいている

























自由詩 水と巡り Copyright 木立 悟 2012-05-27 23:20:36
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