子守唄
永乃ゆち




やさしい歌を歌いたかった

誰も歌ってくれなかったから

野ネズミが騒がしく街を出てゆく

荒廃と言う名がふさわしい場所

私は鎖に繋がれたまままた眼を閉じる


夢を

見る

太陽が地球に接近してきて

総ての有機体は呑み込まれ死滅する

野ネズミの行方は分からない


やさしい歌が聴きたかった

私の喉は潰されていて

歌など歌えないのだ

鎖に繋がれた足は擦れて血が滲んでいる


私をここに独り置き去りにして

母と言う名の女はどこへ行ったのか

野ネズミの方が詳しいかもしれない


太陽が近付いてくる

もうじき世界が終わる

私は声にならない声で歌う


小さい頃に聴いた

母の子守唄を


自由詩 子守唄 Copyright 永乃ゆち 2012-05-20 10:04:46
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