掃除機
湾鶴


なんと呼ばれる鳥なのだろう
石段の不揃いな傾きに
しっとりと煙る霧の中
コードの巻かれた掃除機は
底辺の視界を黙々と追っている

ガラガタリと小さな車輪を回し
苔を舐めるように登ってゆく
彼に
松の実を降らせた
あの鳥

羽の重なりまで見えるほど近づくと
な真っ白いフンを
上昇しながら撒き散らしていった
あの温もりと点図

彼はコードを伸ばそうと
後ろを振り向く
 泥ハネのした体
  砂埃の入った隙間
   ゴミパックは
    ずいぶん前から入っていない
キッチンハイターを
試したくなった
雑巾ではなく清潔な布巾で
払拭したくなった
またあの時期がやって来る

彼は背を丸めて松の実をすこし吸うと
空っぽな胃の壁に
カラカラとぶつかる音がした

松の実とフン
まだ感触が残っているのに
あの鳥は
黒点に成ろうとあえぎ
惑星からをも 
離れてゆこうとする








自由詩 掃除機 Copyright 湾鶴 2004-12-07 03:35:39
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