憑依
HAL

オーディオの世界は異性や酒や賭博とは
較べ物にならない程 のめり込めばのめみ込めほど
留まることのない私財を投入してしまう

そのひとたちはオーディオを製品と呼ばず作品と呼ぶ
そう呼ぶひとの作品への愛はマリワナ海溝の深さの比ではなく
底なし沼と呼んだ方が正しい世界なのだが

オーディオの深みにはまったひとびとは
原音再生と云う見果てぬ夢に憑依された人種であり
それは無常を知覚すること以外の何物でもない

しかしそれを骨身に沁みて解りながら
その無常に溺れ込んでいってしまうひとたちを
ぼくは愛しているし大いなる敬意も払うに吝かではない

なぜなら彼等はイーカロスが天空に近づき過ぎて
地上に墜落し命を落とす行為と知りながら
神に背くことに生涯を賭けてしまうからである

その生半可ではない異端者と呼んでも間違いでない
その憑依を祓わず殉じる覚悟を抱くひとたちを
果たしてぼくらは不幸だと愚かだと言えるだろうか






※作者より
ぼくは暫々偏った趣味の世界を詠んでしまいますが、
これもそのひとつです。ですので分からない方には
お詫びを申しておきます。ぼくは、かつてMaCintoshのC-22を
所有していましたが止む得ない事情で手放しましたが
それはいまでも痛恨のミスとして後悔しつづけています。


自由詩 憑依 Copyright HAL 2012-05-16 23:18:42
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