遅すぎた青年期の終わり
北村 守通

振り切れずにそのままにしていた約20年近くを
2日間で片付けた
どさくさに紛れて様々な思い出も放り込まれて処理されていった
それを横目に見ながらも
もう二度と手に入れることはできないはずであるということもわかっていながらも
止めることはできなかったし
またそれがきっと生きていくのに必要なことの様に思われた

   年齢を積み重ねると
   空き容量は少なくなっているのだから
   きっと効率的に動かなくてはならないのだ

がらんどうになった部屋を目の当たりにして
初めて訪れた日を少しばかり思い出したが
涙腺がどうのこうのというのはやはりなかった
がらんどうになった部屋を目の当たりにして
積み重ねてきたはずの20年ががらんどうでしかなかったということを思い出したが
振り出しに戻ることには慣れていたし
また
それが自分に残された唯ひとつのものである様に思われた
なくすと分かっているものならば
やはり
持つべきではなかったが
毎度後から思うことが
久しぶりに頭の中に顔を出したとき
思わず微笑まずにはいられなかった

強くなった風が
何を言っているのかさっぱりわからなかった
叩きつけ始めた雨が
何を言っているのかもさっぱりわからないようになっていた

私は窓を閉め
鍵を掛けたことをしっかりと確認すると
冷えきった惣菜と
温くなったスポーツ飲料で
がらんどうになった部屋の中で
最後の食事を済ませ
お別れとした

今度は本当のお別れの挨拶をした
いついつまでもお元気で
との言葉をつけることを忘れなかった


自由詩 遅すぎた青年期の終わり Copyright 北村 守通 2012-05-13 02:31:09
notebook Home 戻る