シャイな奴には白い花束を送る
アラガイs


頭を掻きつつ辺りを見回しながら惚けている。
食べ滓が下顎にへばり付き、それでも平気で涎を垂らしている。
何をするでもなく、何かを考えている様子でもない
背もたれの高い椅子に、深々と腰を潜らせながらうなだれている。
、起きているのか、眠ったまま死んでいるのか、
張りのある大きなお尻が目の前を通りすぎて行く
それは色鮮やかに甦ること
すると一瞬、何かを思い出したかの様に力強く輝き、萎びた手を持ち上げては触覚は生き返るのだ。
怪訝に振り返る顔を眺めては、ニタリ、皺くちゃの頬が幼子で笑う。それから、その度に叱られる。
そして朝を迎えると、また夜が来る 。

チャイイな奴だった 。
ただ面白いだけの本を、深読みし過ぎるような無垢さ
人生が二度あると本気で考えている、シャイな奴だった 。

人生を語らせば蒸気機関車のように沸き立ち
恋愛を語れば、次から次へと滑らかに氷の上を踊る
見栄がペリカンを装う、口の達者な伊達おとこ
稼いだ金はそれ以上に仲間たちと使い果たすのさ
「酒、賭博、おんな、、喧嘩、仲間、麻薬、狂喜、狂気」
一度めは死ねなかった
野草に生きて、それでも道端に根を張った
その後の彼を知らない、はぐれ鳥の淋しさよ
すがりつきながら石仏の巣に還るのか
それから、革のジャンパーも単車も家も、おんなも全部棄てた。
天井がぐるぐると回りだせば、身体はくの字に折れる
隣で唸るのは呼吸もしない機械の音
二の腕に刻んだ青い文字がそろそろ腐りはじめたらしい
臨終見舞いの顔色が、彩り豊かに浮かんでは消え失せてゆく
日毎合掌の灯が近づいてくるのがわかるだろう
ここは匂いのしないモノと腐ったものの集積所
身体は朽ち果てても言葉は生きている

何も遺せなかった
人生そのものが詩と消え失せて
二度振り返り、面白くないモノまでも受け入れた
喪はすぐに明けるだろう
チャイイに
最後まで正体は隠れ
君は、そんなシャイな奴だった 。












自由詩 シャイな奴には白い花束を送る Copyright アラガイs 2012-05-12 03:17:22
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