ほとり しずか
木立 悟






午後を夜に変える光を
首にまぶして遊んでいる
声の無い鳥たち
枝のなかのはばたき


土に臥せるほどかがやく花
枯れ野を歩む枯れ野の足音
砂と光が
空をなぞり 花をなぞる


埋めては忘れ 埋めては忘れ
見えなさばかりが豊かになり
その他は球く歪み狭まる
鳴らないように 鳴らさぬように


たそがれ
生まれの無い陽
にじみ
坂の 向こう側の陽


祭の跡
積み上げられる霧の切れ端
終わるつもりもなく
終わりは終わる


棄てられた機械を花が覆い
風が覆う
空の数だけ空があり
異なる時間を照らしている


まちがいを
さらにまちがえて夜になり
鳥は紅い灯へ帰り
葉の下へ 音は 葉の下へ


銀に鉛で冬になり
傷を晒してたたずんでいる
聞こえぬほうへ 何も聞こえぬほうへ
歩いてゆく


月が編まれた布をほどき
糸を重ね重ね重ねる
ちから無き手のひら
傾げるだけの手のひら


水に沿って並ぶ檻には
何かが入っていた気配さえなく
ただ空白を吸う空白が
何者かの未来を見つめている


霧とけもの
影だけがゆく
晴れることのない
さかさまをゆく


音を持たない光を連れて
海のかたちを歩む鳥
朝が現われはじめても
波は夜ばかり打ち寄せる



























自由詩 ほとり しずか Copyright 木立 悟 2012-05-10 23:52:00
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