幸せについて
吉岡ペペロ

幸せについて考えたことがある

小学二年生だった

結論がだせなくて

茶色いサインペンで童話を書いた

空になった女の子、という題名だった

一行めは、これはロシアのお話です

ソーニャという女の子がお使いで冬の森をゆく

途中寒い寒いというおじいさんにじぶんの着ていた服を掛けてあげる

しばらくゆくとまたおじいさんがいてソーニャはまたじぶんの服を掛けてあげる

とうとうソーニャはじぶんが凍えて死にそうなのを自覚する

時は経って

ソーニャは百歳の誕生日を迎えている

ソーニャの旦那もその日が百歳の誕生日だった

村中がふたりの百歳を寿いでくれている

そんなお祭りムードのなか

ふたりは自然にそして同時に死ぬ

ふたりは空を翔けあがってゆく

おばあさんになったソーニャはどんどん若返ってゆく

おじいさんもどんどん若返ってゆく

少年になったおじいさん

少年はソーニャに昔の話をする

あのとき服を掛けてもらったおじいさん、ぼくだったんだ、

ソーニャは昔を思い出す

ソーニャの目が少年を見つめている

ぼくは神様なんだ、だからソーニャ、きみも神様になるんだよ、

少年もソーニャも空になる

空になっていまもみんなを見守っている

ざっとこんなお話だった

百歳まで生きて

それをまわりのひとも喜んで

愛するひともそうで

ふたりで自然に同時に死ぬ

そんなことをぼくは幸せだと感じていた


自由詩 幸せについて Copyright 吉岡ペペロ 2012-05-08 00:22:53
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