再生工場
木原東子
今日はなに話そうか
そうだねえ
知ってる人は知ってるだろうけど
変なことがある
ビッグバンのとき
なんて気軽に使う言葉
ちっともわかちゃいないけど
そのとき極小のところに
極大の圧力がたまってて
極微の「はてなのもの」が
わずかに物質として残ったって
最初は、といっても
一秒の1億分の一という瞬間だけど
おおよそね
もう狭くって液体みたいに
おしくらまんじゅう
そこでバンっ、つって広がり出して
やっと動けるようになったって
天才たちが楽しそうに画面でなんだかだ喋ってるが
すったもんだの末
かれらもわかってないんだろうね
まあまあ、原子ができてきたんだよね
ヘリウム、水素、ええっと
ともかく軽い連中さ
それから延々何十億年かして
原始の大恒星が大爆発
その圧力の凄まじさ、ついに重い原子が作られた
鉄、金銀だね
あ、炭素や酸素もだっけ
う〜ん、ここはあやふやだ
ともかく言いたいことは
これらが宇宙中に飛び散って
やがて集まって
(理由や方針があったかは不明)
(物理化学にしたがったのは明白)
星になり、生物になりましたってこと
その材料は
なにひとつ消えていない
なにひとつそれから増えていない
全部使い回しだって
大いなる輪廻だね
リサイクルだってこと
君が(孫を想定)空気を吸うと、あるいはソクラテスが
吸ってた酸素がまざっているかもってよ
ソクラテスって誰って?
ムニャムニャ
君の体は同じに見えるでしょ
でも日々入れ替わってるんだな
原子がね
そうそう、おばあちゃんが八歳くらいで
銀河系のこと習った時
学者も宇宙はこれしかないと思ってたと!
かのアインシュタインも
銀河系以外の宇宙を考えていなかったんだって!!
あれから遥かな旅をしてきたよね
この再生工場、大きすぎ!
小さすぎ! 長すぎ! 複雑すぎ!
人類よがんばれ
君もそんなことで泣いてないで
がんばれ
真理は君の中にあるから
(専門家さん、ごめんなさい、知ったかぶりで)