うばわれにいくんだ
竜門勇気


雨のふり方だけが
世界を知るすべ
ガード下に目を置き忘れた
哀れな物語をしよう

二日酔いが
ついに胸元であふれて
僕は灰色の吐瀉物を
コンクリの壁にぶちまけた
艶のない葉っぱをちらちら生やしてる
沸き上がる土を胃液がぬらしたっけ
頭の中で痛みはもう言葉に変わっていて
それはたぶん不思議なオーケストラ
アンコールがないのを確認してから
反吐をかき集めて泣いた

世界は何等分かに分割された
それが悲しくてまた泣いて
気づいた時には片目がそこに縛られてた

しとりしとりが
ざぶざぶに変わったら夏
ざぶざぶが
ふらふらに変わったら冬
右目を閉じるといつも見える
視界が季節に奪われている

そして僕はまた
二日酔いをこじらせたまま生きている
次はどこへ
なにを奪われるんだ
いっそみんな
奪われにいくんだ
誰も欲しがらない自分を
今日も奪われにいくんだ

雨の降りかたで季節を知るように
奪われたかけらで
我を忘れにいくんだ
後戻りする場所を作りにいくんだ


自由詩 うばわれにいくんだ Copyright 竜門勇気 2012-04-19 23:54:05
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