30wの春
瑠王



虎はその幕の奥深くに身を委ね静かに眠りを始める
兎がその上に立ち
電球のフィラメントでバイオリンを奏でると
そこ一帯は輝いて
学生達の駆る自転車の前輪と後輪が
まるで男女のように踊りだす

音楽は電球のガラスの外までこうこうと照らす
でも兎は知っているのだ
そこがとても小さな庭であること
そしてそのずっとずっと外側で
世界は獣の大きな手によって包まれていることを


兎の涙でショートした春が
やがて夜を迎え静寂を取り戻す頃
虎は安らかな夢を見ている



自由詩 30wの春 Copyright 瑠王 2012-04-18 16:11:34
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