スルー
本木はじめ



きみにまた会ってしまったので
電線に止まった小鳥たちが見守る午後
長い髪に停止する空気たち
声はもちろん言葉みたいだけど
やぁやぁ、鋭い距離でぼくらスルー、そしてスルー、スルースルースルー
山に登れば下らなければならないわけで
高速道路の光が揺れる
こんばんはこんばんは
すれ違うだけのひとびと
きみもその中にいるから
たとえきみが犬好きだったとしても
語り合うことも語り合う場所も
ここにもどこにもないんだよ
やぁやぁ、気分的には青空なので
小鳥たちが飛んでゆくのはさみしくないさ
こんばんはこんばんは
一瞬、目が合ったね
脚が綺麗だね
脚が綺麗だね
もう一度言うけど
脚が綺麗だね
まるでやぁやぁ、ぼくが死ぬまで知らない言葉のように
ぼくが死ぬまで生まれない少女のような
信号機が赤から青に変わったときだよ
やぁやぁ、こんばんはこんばんは
夜に似たひと
きみに似たひと
どうやら、さよならの季節みたいだね
望むものをあきらめて開かれる手の平に
青空が流れる





自由詩 スルー Copyright 本木はじめ 2004-12-05 01:01:48
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