出社日
ズー



バナナをたべるやつがいる。仕事中だってのにひどく蒸し暑い。暖房をきった社内ではでたらめに剥かれた皮が、黄色い運河のようです。本流から逸れた給湯室でお茶係の女の子たちがバナナをたべている。2階から6階まで駆け登る同僚がいる。なんでも滝をつくるんですって、と女の子たちの噂話が聞こえてきた。時刻は午前5時。まだ誰も出社してこない。
風鈴にでもなった気分で、お昼の合図をする同僚がいる。報告書を書いていて、書いてなくてもいいのだけど、ぼくは、もう!としか書いていなかった。珈琲の香りがして、女の子たちは童話にでてくるお姫様のように幸せになりました。次の頁をめくると6階から2階まで駆け降りてきた同僚が冷やされた。
いいかい?そもそも誰も出社して来ないじゃないか!と運河の対岸では社長が怒鳴り散らしている。お姫様は、見目麗しい草原で王子様のような同僚を待っています。当社では滝壺に飛び込むと立派な大人として認められるのよ、と珈琲を運んでくる。冷やされた同僚は一息に飲んで黄色い滝まで引き返した。声の枯れはてた社長が見ている。バナナを食べているやつがいて、報告書の続きが書けない女の子がいる。私よりも私にくわしい王子様はいずこかしら?滝壺から生還して認められた大人が振り向いた。
おかしなことに、ぼくは自宅を出たばかりだから遅刻するだろう。本流だとおもっていた運河はバナナの皮でした。同僚は滑って転んでいる。8時間労働をおえたように隣家の風鈴が煽られていた。


自由詩 出社日 Copyright ズー 2012-04-14 23:40:21
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