HAL

ぼくは杖など必要ないと
想って生きてきた

杖を欲しがる奴は
弱い人間だと見下してきた

でも何故なんだろう
ぼくはいま杖を必要としている

杖を欲しがる奴には
絶対なるまいと決めていたのに

ぼくはいま杖を欲しいと想う
それがないとぼくはもう歩けない

折れない杖
失わない杖
去らない杖

ぼくはいまそんな杖を欲しいと願う
ぼくはいまそんな杖を欲しいと想う

弱い人間だと呼ばれるのも怖くない
情けない人間だと言われても平気だ

ぼくはいま杖を欲しいと願う
ぼくはいま杖を欲しいと想う

この拷問みたいな生に寄り添ってくれながら
支えつづけてくれる一本の杖を欲しいと想う

ぼくはもう老いぼれたのだろうか
意味なく歳月を重ねたのだろうか

あるいは自分が折れそうになっているんだろうか
それとも何かに敗北しようとしているんだろうか


自由詩Copyright HAL 2012-04-13 03:30:00
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