雪守り
砂木

ニュース画面に映る満開の桜
その下で 賑わう人々
東京は お花見なのに

防寒着を着て かわかした軍手を持つ
白い雪が降り続けるので 消しに行く
桜より 広く白い

積み上げられた雪の下は凍って固い
上の方だけスコップで崩して
雪溶け水の貯まる井戸に運ぶ

白い色ばかりの作業中
どうしても土が見たくなった
がむしゃらに固い雪を掘り
土を雪の上にばら撒く
黒く雪が 泥の色になる
へにゃりとなりながらも
緑の草も生きている

春だ 春がいる

一番高く積みあがっていた雪を下まで崩す
雪の下でも瑞々しい 苔が現れる
勢い余るとスコップは 苔まで掘る
なつかしい緑を傷つけないように慎重に 
苔が土と暖かさを守ってくれるように
地面の幅を広げる 

降り止まない雪は また苔を覆い尽くす
筋肉痛だけが残り 春は来ない

でも 冬でもない

崩しただけの高さに 雪は戻れない
戻れないだけ崩したんだ 雪よ

地震の時は大地の揺れを抑え
暴風から 家を守ってくれた
雪の被害にあっても 雪の壁を憎みきれない
畏れ なじんだ雪の白さ 恵みは 恐ろしい

雪溶け水の流れる かすかな音
かなわぬ力でも スコップの音を重ねる



 


自由詩 雪守り Copyright 砂木 2012-04-08 08:39:27
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