グランドツアー/おくのほそ道
吉岡ペペロ

彼は弟子とグランドツアーに出掛けた

行く先々で詩を調え

彼の自我はそのあいだ

宇宙の奥へと追いやられた

詩を調えるたび

彼の自我は宇宙の奥へと旅をしていたのである

だからといって詩を調えることが

彼にとっての忘我ではなかった

忘我を与えていたのは

地図上の移動だけであった

休むたび彼の全神経は風光にさらされた

自我は宇宙の奥へと追いやられ

しかし自我はまだ宇宙の奥の細道に在った

そこに自我が在ることで

彼の詩には真如が顕現した

このグランドツアーが

彼の没後三年いまから310年前

おくのほそ道と名づけられ刊行されたのである






自由詩 グランドツアー/おくのほそ道 Copyright 吉岡ペペロ 2012-04-06 00:06:11
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