無知
……とある蛙

音は空気を通過するだけで屈折する
光は水を通過するだけで屈折する
事実は脳髄を通過するだけで屈折する

視た
聴いた
嗅いだ
触った

経験という名の感覚の残滓は
時間を刻むことも無く
他の事実とともに希釈する

文字で刻まれた事実らしき物は
書き手の恣意的な記憶の残滓で
当初光を放つ
鮮やかさを誇示する
そんなものは時間と共に剥げ落ち行く

物が語るストーリーは
何も屈折せず
事実が時間に刻まれる
物によって人は真実を感知する。
事実を関知したのに
解釈という名で嘘を塗り込み
真実であることを無意識に隠そうとする。

なんのこっちゃ
結局、偉そうに振るまったって
何も知ることはできないのだ。


自由詩 無知 Copyright ……とある蛙 2012-04-05 10:05:49
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