人はみな歌をもっている
天野茂典

 
  ★ 落ちてくるラメ入りの空
  高架線の駅からは
  遠くが見える
  夕方のラッシュ時の
  高校生のおしゃべり
  同じ空に目をくれるものはいない
  みんな街に帰るのだ
  準特急は新宿へ人を運ぶ
  人はみな歌をもっている
  そのサビの部分はなかなか
  ださない
  携帯電話にメールを書き込むように
  自分の歌をうちこみながら
  こころのおくに秘めておくのだ
  駅は歌で満ちている
  声にはだされない
  人々の歌だ
  そのことにまた
  気づいていない人々も多い
  おふろあがりに
  ふっとでかかるが
  それを歌ときづかない
  歌手が自分であることに
  きづかない
  きづかないからいいのだが
  高架線のホームから
  遠い空を眺めていると
  ぼくの耳には聞こえてくるのだ
  あらゆる人のあらゆる歌が
  それは一大音響となって
  ぼくの三半規管を狂わせる
  いい歌がいっぱいあるからだ
  ぼくはウオークマンなどしているひまがない
  草のようにゆれている
  ヒップポップを
  ラップを耳に
  踊りだすのだ
  人身事故の電車など
  ホッポリだして
  グルーブするのだ
  おう、いえぃ!


    ★ (詩はその歌のサビの部分だ ね


              2004・12・03


未詩・独白 人はみな歌をもっている Copyright 天野茂典 2004-12-03 18:06:43
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