頂きます
一 二

昔、屠殺場に送られる牛を
トラックに積む前の牛舎で眺めていたとき

その牛は
あと何時間後かに死に
バラバラにされて
肉塊を急速冷凍され
お店に並び
食卓に並ぶというのに

交尾をしていた
これから自分がどうなるか
知ってか知らずか
交尾をしていた
牛は人間の都合を知らねぇ
人間も牛の都合を知らねぇ

赤黒く
ぬらぬら光って
いきり立った牛の性器を見て
生きること
死ぬこと
始まりと
終わりが
今、まさにここにあると
思った

人間に飼われる畜生は
彼らの生も
その死も
全て人間のものだ
何から何まで人間のものだ
一から十まで人間のものだ

菜食主義者とやらには
きっと解るまい

野菜を食おうが
肉を食おうが
魚を食おうが
命は命を食わないと
生きていけないのだ

命を殺して食べることに
善も悪もへったくれもない
ただ、そういうふうに世界が出来ているのだ


自由詩 頂きます Copyright 一 二 2012-03-26 05:07:01
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