空とキャッチボール
まーつん

毛羽立った 古いテニスボールを 
空高く 投げ上げる

ナイスキャッチ

捕まえたのは カラスのくちばし
休日の 午前十時
郊外に 散歩中

獲物をくわえたまま ゆったりと滑空するハシブトガラス
器用に首を振って ボールを落とす

見上げる僕は あんぐりと口を開いて その動きを目で追いながら
小走りで前に進んで 返球を受け取る
崩しかけた上体を 何とか立て直して
縦90度に 精一杯鋭く投げ返す

イチローばりの黄色いビームにも 空の内野手はひるまない
風切り羽の先で軽くいなすと 勢いを殺したボールを

ヒョイとくちばしで またキャッチ

羽をさっと打ち振って 高度を稼ぐと
太陽を背に 少し先へと 鋭く滑降していく

ひねりかけた足首 気にならない痛み
身体が ひとりでに動く

立ち並ぶ 土曜のビルの街並みを
荒れ地の向こうに 置き去りにして

鳥とキャッチボール

空とキャッチボール


自由詩 空とキャッチボール Copyright まーつん 2012-03-20 12:32:52
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