ゆきのはら
鮎
こころについた傷は きえないの ぜったいに
雪が黒いアスファルトに吸い込まれてく
天からきたものたちは
天に還るなんて 嘘
こころについた傷はね 治っても 痕 消えないの
あなたは笑う そうやって傷跡をかばうみたいに
さらさらと 雪がやまない
指先が 痛いよ つめたくて 痛いよ
春の雪は 積もらない 雪
なんども繰り返しみてきたから知ってるの 私
積もることができないで
振り落ちて
すぐに消えてなくなる雪だから
もう 痛くないの
えぐれた痕は そのままだけど
もう 痛くないのよって
繰り返さないで
まだ 痛いくせに
うそつき まだ 痛いくせに
雪が 積もればいい
あなたの上に
雪が 積もればいい
わたしの上に
まっしろく まっしろく まっしろく まっしろく
むかしみた 雪のはら みたく
雪が積もれば いいのに