淵を巡る
木立 悟





まるく束ねられた電線が
冬を冬のままためらわせている
雪が雪の輪をのぞきこみ
空の後ろの花を見つめる


月のかたまり
中庭の砂
花のあること 無いことを知らせに
夜の雨が
波に降る


逆光に立つ
白い衣
砂を横切り
縛る黒い火


夜の一部が
金に廻る
水の曲がり角
路はさみしく


遠くから遠くへ
すぎてゆく雨
音も光も置き
色を持ち去る


わだかまりのけだもの
岩を登る傷
越えてゆく雷雲
みどりに光を塗るみどり


夜の金が夜をすべり
崖を照らし 丘を照らす
手をのばすものを鉛に染め
波の音を火に染める


穴があり
淵を巡る
穴には水があり
夜を映し 空を映す
ためらいも無も
すべての後ろの花までも
花までも




























自由詩 淵を巡る Copyright 木立 悟 2012-03-19 20:14:51
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