ベランダ
草野春心



  籠の中で眠っていた
  バナナの果皮を捲ると
  ぎっしりと雪がつまっていた



  溶けてゆこうとするそれを
  あなたは指の腹を使って
  精一杯に踏み固めた



  きょう、冬の陽は
  滑稽なほど柔らかく
  白く冷たいあなたのシーツが
  ベランダでぱたぱた笑っている
  そうして
  すべて
  穏やかな香りに包まれ
  ぼくはぼくの心を
  静かに見喪った





自由詩 ベランダ Copyright 草野春心 2012-03-18 18:00:58
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春心恋歌