苔地蔵
灰泥軽茶

山を歩いていると
深い緑に浸り
濃密な孤独感と解放感を
吸い込み吐き出す

誰もいない山道に
誰かの視線があるかと思うと
綺麗な赤いまえかけをした
苔だらけのお地蔵さんが
ところどころで迎えてくれる

私は全てに立ち止まり
手を合わせることはできないので

心の中で
「こんにちわ」
とあいさつをして通り過ぎているのだが

ときおり
ちゃぽんと
石ころ大のお地蔵さんが
心の中に飛び込んで
あぶくを
しゅわしゅわしゅわわわ
とたくさん吐き出し消えていく

私は普段計り知れない自身の奥底広さを
全身鳥肌で疾走し
ぶるぶるっと武者震いし
少し足早にその地を通り過ぎる





自由詩 苔地蔵 Copyright 灰泥軽茶 2012-03-18 15:37:27
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