シング・ウィズ・ウルブス
角田寿星


「きょうはパパとおふろにはいるの」
ユキちゃんはすでにすっぱだかで
あたりをとことこ歩きまわってるので
父さんもあわててすっぱだかです。

シャンプー シャワー
ちょっとした格闘のすえに
ふたりで湯舟につかります
「パパ、おうたうたお」
「うん何がいいの?」

ワーオワーオ ワオー
ボバンババンボン ブンボバンバババ
ボバンボバンボン ブンバボン

…『狼少年ケン』です。
昭和39年放映のアニメですから
教えたのはもちろん父さんで
ユキちゃんはイッパツで
この歌を気に入ってしまいました。
それにしても子供というのは
どうして何度も何度も際限なく
同じ歌をうたいつづけるのでしょうか。

「ワーオワーオ ワオー」
―また歌うんかい。
「いつもおいらはなかない」
―うんうん。
「しっぱいだってへっちゃらあ」
―歌詞をつくっとるぞ、つくっとるぞ。
「わらうかどにはふくきたるう」
―エラい方向にハナシが進んでるなあ。
「みんな いーいーこー」
―…もう何も言うまい。

カエルの子はカエルと申しましょうか
いや正確にはオタマジャクシなんですけど
夜のしじまにこだまする
ボバンボバンボン ブンバボンです。

「パパ、このおうたね、いつも
 保育園のみんなでうたうの」
うそつけえ。


自由詩 シング・ウィズ・ウルブス Copyright 角田寿星 2004-12-02 19:36:58
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